三重大学 / 気象・気候ダイナミクス研究室の1コマ → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/earth/index.htm → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/
お久しぶりです.B4の永川です.
先日,「国家はなぜ衰退するのか」という本の上巻を読みました.アリゾナ州ノガレス,ソノラ州ノガレスという2つの地域の経済格差の原因を通し,政治と経済との関係について非常に明快かつ理論的に示してあり,面白かったです.この本を読む直前に全体主義思想について描かれた「1984年」,「動物農場」の2冊を読んでいたこともあり,ソ連について,細かい視点,広い視点の双方から理解を深められる良いタイミングでこの本を読めたなと思いました.良い本を買ってくれた親に感謝です.余談で228文字も使ってしまいすみません.本題に入ります.
昨日,以前に行った三陸沖集中観測(もしよければこちらを参照してください)の解析結果の報告に関する会合が行われました.今回の会合はそれぞれの結果を踏まえた論文作成への議論が要点の一つとなっており,研究者の方々が観測結果からどのようなことを見て,論文作成への1ステップを踏むのかということを見学させて頂く非常に良い機会になりました.今回はその報告です.今回の会合は東北大学のホールで行われました.仙台は三重と比べるととても涼しく感じられ,快適だなと感じました.この会で行われた発表の中で,面白かった発表をいくつか紹介させて頂きます.
まずは今回のラジオゾンデ観測で得られたデータから,慣性重力波の観測が行われたのではないかという報告について.以前に行われた報告会では,その軌道や上昇速度から,ラジオゾンデが寒冷渦の縁の部分を通ったのではないか,という議論でしたが,今回はそこから研究が進んだようで,前回寒冷渦の下降流としていたものが慣性重力波である可能性があるのではないか,という議論が行われていました.この発表では他大の同期である4年生が発表しており,同期がここまで研究を進めているのを目の当たりにして,私も負けてられないなというように感じました.
そして今回の観測では特に霧が目に留まる特徴だったようで,このことに関する議論が多かったように感じました.各発表で観点もそれぞれであり,霧が発生していない場合の寒冷渦との関係や暖水渦の上での観測結果によって得られた霧の生成,維持,消滅過程に関する調査,海霧の風と海での関係に係る調査などがありました.私個人が霧という現象にあまり詳しくないことからどれも非常に興味深く感じられました.それぞれの発表ではSST勾配と気圧場との関係や,地形に伴う風の変化と空気の温度,海上気温と海表面水温や風向,相対風速と霧そのものへの関係など,海表面での様々な要素が霧の発生や消滅,無発生に関わっているということを知ることができました.
また,今回の会合の終盤に行われた発表で,断水渦の縮小と熱放出に関わる研究報告がありました.昨年度の鉛直プロファイルと比較して低温化した暖水渦について,低温下に際して失われたエネルギーがどこに,どのように使われたのか,という内容でした.発表の中では渦の近辺では2.5度程度,500km圏内でも0.8度程度上昇する試算結果が出たことが述べられており,暖水渦の持つエネルギーが私の思っていた以上に大きかったことを感じられました.また,このエネルギー放出に伴って水温勾配の構造が変化する可能性もあることを質問した際に教えて頂き,水温勾配の変化で色々見てみたい私としては非常に面白い内容だったと感じられました.
今回の会合への参加を通して,研究者の方々がどのようにして観測結果などのデータを解析し,解析結果の考察を行い,論文作成に着手するのか,その一端を感じ取ることができました.また,この中で,観測結果の解析もさることながら結果の考察については難しそうであるという印象を,実際の進捗発表や議論の様子を見て,改めて見て学ぶことができました.私の研究についても同じことが言えることは間違いないと思うので,当たり前にいかないことが当たりまえということを念頭に置き,今後も頑張っていこうと思います.
観測が終わってまだ一か月すら経過していない状況下においてもこれだけの研究が行われ,現在でも様々な結果が出ているということを知ることができました.それだけ大きなデータを得られた観測に,学部生の折から参加できたというのは改めてとても貴重な経験ができたんだなということを,今回の参加で再度感じている次第です.
このあたりで今回は終わろうと思います.ここまで読んで頂き誠にありがとうございました.
重ねての投稿失礼します.こんにちは,B4の永川です.
4/17において,山口県にある水産大学校にて行われた,ハビタブル日本豪雨豪雪班の会合に参加してきました.
私個人としては山口県が初めて行く地域であったため,「魚がおいしい」という事前情報の実態を知りたいという気持ちを片隅に抱えながら行ってきました.現地は休市で魚にありつけなかったので,その分しっかり会合での話を聞いてきました.今回はその報告です.
今回の会合では今後行われる観測航海に関しての議論や,観測航海に関連する研究発表などが行われました.観測という点に関してだけでもJPCZといった現象に着目したり,解析データや機器に着目したりと,様々な観点から見た研究発表があり,面白かったです.研究発表の中で気になったものについていくつか紹介させて頂きます.
まず印象に残っているのは2023,2024年夏季における下層雲の変化についての研究です.乾いた空気の取り込みの強さを示す強さであるエントレイメントという指標がSSTと対応しており,この指標が雲の維持や消滅に寄与している,という内容でした.下層雲についての研究というものを耳にすることがあまりなかったので,興味をもって話を聞くことができました.
また,SSTに関連して,2025年2月の帯広での豪雪事例において,北海道の東側で正のSST偏差があったことなどが述べられていました.帯広での豪雪事例については事例の発生以降,様々な方や多くの場で発表されているのを耳にするので,やはり非常に高い興味が持たれているんだなと感じました.
黒潮に関しては,三陸沖において親潮が流入しているということを伺いました.それに伴った観測ルートの変更なども議論されており,観測航海の詳細がかなり可変的であることを改めて知りました.
観測系会議においては,新たに追加された情報の共有やそれぞれの船の間での連絡の取り方,どのような状況では撤退の判断をするか,といったような話が行われていました.それぞれ話にかなり具体性が帯びられており,観測の日が近くなってきていることを肌で感じました.
会合参加期間中の滞在先であった下関は非常に海が綺麗で,魚がおいしそうだなと感じました.また機会があった折にはもう一度市場に足を運んでみたいです.
今回の報告は以上となります.ありがとうございました.
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