三重大学 / 気象・気候ダイナミクス研究室の1コマ → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/earth/index.htm → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/
この文章は帰りの新幹線の中で書いています.車両内の子供の方の楽しそうにしている声が印象的でした.愛嬌という変数の第一モードは,対象との個人的な関係性なんだろうなと思います.
こんにちは,B4の永川です.11月の4日から8日にかけ,福岡国際会議場で行われた気象学会秋季大会に参加してきました.昨年度に様々な場所でお話を伺ってきたこともあり,今回はかなり上手に学会に参加できたのではないか,と考えています.細かな内容は以下に書いていこうと思います.読んでいただければ幸いです.
初日
初日は日ごろからお世話になっているJRA-3Qに関しての発表をいくつか拝見した後,台風に関してのセッションを聴講いたしました.私が研究室に入ったタイミングのあたりでJRA-55からJRA-3Qに切り替わったこともあり,今まではそれらの違いを今一つ理解していませんでした.今回の発表を通して境界値に関しての処理を始め解析期間の延長やバイアスの補正など,様々な改善点を具体的に知ることができました.また,これらの改善点が実際にどのような変化を及ぼすのか,といったことも期間の延長によって新たに調べられるようになったカスリーン台風の事例などを例に挙げていたことで,体感的にその内容を理解することができました.
台風に関するセッションにおいてはAIを用いた気象モデルによる台風の予測に関しての発表などがありました.AIを用いない場合での気象モデルに関しては,その予測精度が近年頭打ちになっているということも口頭発表で初めて伺いました.それはそれで面白い話だなと思う一方で,AIを用いることでその予測精度が飛躍的に向上することや,その結果に関しても一概にAIのみを用いることがより高い精度につながるとは限らないということが述べられており,気象予測にAIを用いることの面白さや難しさを垣間見ることができました.
その他にもセッション内では乱気流に関しての招待講演がありました.この講演においては,それまで大別されていた3つの乱気流とは異なる第4の乱気流である中層雲底乱気流に関して,そのメカニズムを丁寧に説明されていたことが印象に残っています.台風,乱気流ともに,私は普段あまり着目することのない領域の話であったため,今回の各発表を通して,それぞれどのようなことが各現象の基本となっているのか,またそれらのどの部分に着目して研究を行うのか,といったことなど,非常に多くの視点から発表を見ることができ,勉強することができました.
また,同日に行われた口頭セッション終了後の時間に行われた「地球観測衛星研究集会」という研究会にも参加してきました.普段身近にいながらもそれほどフォーカスが行われることのない,ひまわりといった人工衛星やJAXAといった宇宙関係の機関に関する話など,様々な話を伺うことができました.新型ひまわりについての話など,普段なかなか耳にすることのない衛星の裏側に関する話についてもたくさん伺うことができ,衛星だけに月の裏側を見ているような気分になりました.このような口頭後の研究会について,前回はその存在を知らなかったため,今回が初の参加でした.以前に立花先生が仰っていたようにラフな雰囲気であり,各発表の時間も比較的長く取られていたこともあって,話が聞きやすく,また訊きやすい環境でとても面白く感じられました.今後に関してはこのような会の情報を積極的に捉えていきたい次第です.
2日目
2日目の午前中に関しては,主に惑星大気に関してのセッションを中心に聴講していました.昨年度の気象学会においてはなんとなく木星や金星に関しての話題が多かった印象であったのに対し,今年度の気象学会においては火星に関しての話題が多かった印象がありました.昨日の台風などのセッションと同じように,ここでも口頭発表の導入部などを通して火星の惑星気象に関して大まかな内容を知ることができたため,非常に勉強になりました.火星には海がないことから,火星での大気の自由振動は日周期が支配的であるといったことは盲点かつ納得のいく話であり,地球の海の存在の大きさを改めて知るところとなりました.また,深層学習を用いたダストストームの擬似データの生成など,ローバーなどを通した画像データが少ない故の研究なども行われており,面白かったです.
3日目
この日は見たいものがたくさんある日だったので,少し気合を入れて参加しました.特に午後に関して,ポスターセッションにおいてはかねてから興味のあるブロッキング高気圧の渦位(PV)を用いた評価に関してのものを見てきました.何度かこの研究についてはお話を伺ってはいたものの,当時は渦位についてまだ勉強していなかったことや,ブロッキングの評価に関しての知識が浅かったことなどが理由で,内容をきちんと理解できていませんでした.それらを踏まえ,今回は自分なりに勉強や理解を重ねて臨みました.それが功を奏し,今回は内容を自分なりに理解することができ,PVを用いて評価を行うことの利点や解析結果から得られたブロッキングの特徴など,発表から多くのことを学ぶことができたように思います.「細かい構造を捉えることができる」というPV評価の特徴と,現在私が研究の対象としている擾乱については相性が良さそうであると感じられるため,どこかのタイミングで使ってみることができたらいいなと思っている次第です.
ポスター,お昼を経た後は「波と渦による気象・気候の見方」という名前の専門分科会に聴講で 参加してきました.このセッションにおいても学べることはたくさんありました.その中の一つが,「私が波とエネルギーに関する理解が非常に浅い」ということでした.今まではどこがわからないのかも今一つわからず,ショッピングモールで親を見失ったような心情になっていたのですが,今回やっとゲームセンターで毎回親がいなくなることがわかりました.自身の研究について考えるときのネックもここにあるような気がするので,この部分の力学についてもっと勉強していく次第です.
夕方以降も「第5回気候形成・変動機構研究連絡会」を聴講しました.メディアと研究者を交えた,リアルタイムでの対談というのは珍しく感じられ,興味を持って話を聞くことができました.話を聞いていて,パネリストの一人である川崎さんが仰っていた「スピード感」という言葉が印象に残りました.学会などに参加していると2021年や2023年など,数年前の現象が最近起こったこととして話され,私自身も知らぬ間にそう感じるようになっていたため,この話を聞いていた時に一般の方が捉えている「最近の」現象がどのようなものか,改めて気が付かされました.個人的にはこの部分はなかなか気が付きにくく,また重要な気がしたため,今後も意識していきたいなと感じました.また,もう一人のパネリストである伊藤さんが仰っていたことに関して,ラジオを通して言葉のみで天気を伝える方法の話が印象に残っています.「今,この場はどうなのか」,あるいは「最近冷え込んだ,気温も実際に5℃下がった」というように,言葉を用いてリスナーの方々に共感,ライブ感を与えることで,映像のないラジオという媒体で天気を伝える,という話を通して,コミュニケーションの新しい側面を知ることができ,とても面白かったです.
共感といったような感性はパネリストのお二方とも言及されていて,取材などにおいて話し手となる研究者がいかに楽しそうであるか,現象を示す言葉がキャッチーなものであるか,といったことなど,感性的な面でも取材対象が選ばれているということを知ることができました.私が今後発表を行う際も,このような部分を考慮した発表ができればいいなと感じました.
4日目
この日はお昼に会った他大の先輩から頂いた,研究に関してのアドバイスがとても印象に残っています.私の研究している黒潮や黒潮続流,ストームトラックに関する事柄について,参考になる論文やそれを踏まえた意見などを数多く,加えて私の疑問に対して非常に丁寧にご教授頂きました.また,論文に対して抵抗を持たずに読むコツなども教えて頂いたことで,その後に論文を読む際の精神的なハードルがぐっと下がりました.お昼という短い時間ではあったものの,得られるものが非常に多く,とても有意義な時間を得ることができました.
5日目(最終日)
この日は寒気に関するセッションをはじめ,ストームトラック,ジェット等に関する話題が午後にもちらほらとあるなど,最後まで気の抜けない一日でした.
中でも研究室の先輩が教えてくれた方の発表の一つが私の研究とよく似た方向性のものであり,私の研究とどのような点が似ているか,またどのような点では異なっていて,私の研究として示すことが可能であるかといったことなど,多くの面で非常に参考になりました.内容そのものも非常に面白く,大気海洋相互作用の面白さと可能性,また難しさを感じました.改めてもっと勉強していこうと感じた次第です.
各日の所感などはおおよそこのような感じです.この秋季大会全体を通して,個人的に一番大きかったことの一つは,遅くとも前日にはポスターや口頭発表のプログラムを確認して,どのような発表を見るべきか,あるいは見たいかといったアタリをつけておくことでした.至極当たり前であるという認識はあるのですが,やはりこれをするとしないとでは,どのような発表をより重点的にみるべきかといった体力配分のしやすさが全く違うように感じられました.今後はサボらずきっちり刷ってペンでグリグリしていこうと思います.
今回の参加での反省点としては,各発表の予稿に目を通していなかったことが挙げられます.発表中にサッと流されてしまった部分が気になってしまい,その後の内容についていけなくなったということがしばしばありました.それらの多くの部分は恐らく手元に予稿があれば解決できたように感じられるので,最低限「これには絶対に行く」と決めていた発表のものは目を通しておくべきであったなと感じました.
同じ学会であったにも関わらず,今回の参加では前回と比べて非常に多くの学びを得られるようになっていたことを強く感じました.僕の研究に関しても様々な方に論文の紹介やアドバイスを頂いたため,その厚意に応えられるよう,一層の努力を重ねていこうと改めて感じている次第です.この学会の後,そう遠くない来月の上旬にハビタブル日本全体会合や大気海洋相互作用研究集会などがあり,それにも参加をする予定なので,そこではこれらの反省を生かしていきたいなと思います.
最後に,私が博多で見かけたかわいいマスコットキャラを紹介させていただきます.
キューポちゃんというそうです.博多で3時間グッズを探しましたが見つかりませんでした.
今回は以上です.気がついたら4000単語を超えていました.書きすぎですね.
もう少しまとめるよう善処します.
長々と読んでいただきありがとうございました.
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