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地球日記

三重大学 / 気象・気候ダイナミクス研究室の1コマ → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/earth/index.htm → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/

   
カテゴリー「観測」の記事一覧

京大乗船実習@伊勢湾と外洋

今年度4回目くらいの投稿になるのでしょうか,色々参加したんだなぁと感じます.B3の永川です.

今回は京都大学の方々の乗船実習に参加させて頂きました.ラジオゾンデを用いた観測の経験者としての参加という側面もあるということや,京都大学の参加者の方々は全員博士課程や修士課程の院生の方々ということで,参加前はなかなかドキドキという感じでした.
その報告を以下より行わせて頂きます.

一日目

この日は前泊ということで,使う機材の準備や乗船についての諸注意などを行いました.
予行練習の際には三脚を立てて行ったのに対し,船上では手すりなどに括り付けて設置を行っていました.また現場ではタブレットなどを開いて手順などを確認する余裕はなかったので,予行練習であらかじめ設置手順を確認しておいたことの重要性を身に染みて感じることができました.

二日目

この日の朝,風が強いということで,スケジュールを変更して沖合にはあまり出ないことが決まりました.個人的には過去に行った別の実習の際にも黒潮の付近まで行くことができなかったため,少し悔しかったですが,こればかりは自然現象なので仕方ありません.次機会があればその時には行けたらいいなと思います.
この日にはCTD,乱流プロファイラー,流速計ブイの試運転を行いました.今回の実習全編を通し,唯一の外洋での活動であったこともあり,やはりそれなりに船が揺れていることも印象的でした.
また,乱流プロファイラー,流速計ブイについては今回初めてその存在を知るものであったため,「海の流れってこうやって知ってるんだ」という印象をうけました.
それぞれ私から見ると初めて見るような仕組みでのデータ取得を行っており,非常に面白かったです.流速計についてはドップラー効果が用いられていたことがとても印象的で,様々な場面で使われているな,と感じました.
CTDについては以前何度か行ったことがあったということもあり,ある程度はてきぱきと操作を行うことができましたが,やはり忘れていることも非常に多かったため,もっと頑張ろうと思いました.

三日目

この日はすでに湾内に戻っており,伊勢湾の内部でひたすらにCTDを用いた観測を行うという日でした.その数の合計はなんと11回であり,後半では表面採水など,かなり手慣れた様子で実習を行うことができました.この日は湾内であるにもかかわらずとにかく風が強く,波も激しいものでした.平均風速が15mを超える時間帯もあり,波しぶきが顔などにかかってくる,といった場面も少なくありませんでした.この様子を記録しようと手持ちのスマートフォンを構えた際,あまりの強風で手元のスマホが飛んでいきそうになることもありました.これほどの強風や波を経験することもそうそうできるものではないので,むしろこのような機会が得られてよかったと思います.

最終日

最終日には主に下船に向けた準備がおこなわれました.毎回やや苦戦するベッドのシーツの整理などを行った後,初日に設置したラジオゾンデ観測の機器の片づけを行いました.機器の設置については比較的円滑に行えたものの,前日の強風,波しぶきの影響もあり,機器の片づけにはなかなかな苦戦が強いられました.とにかく機器の露出していた部分にたくさんの塩が付着しており,拭きとるのが大変でした.

感想
乗船を伴う実習が今回で三回目ということもあり,船での生活,実習双方の面で,良い意味での慣れを感じることができた.特にラジオゾンデでの観測については事前の練習があったということはもちろんあるとは思いますが,観測模擬演習の際には私が京都大学の方々に観測手順の説明を,その意味なども含めて説明できたということは自分の自身につながりました.また,CTDの操作や記録,表面採水についても,以前の実習では先輩の方々におんぶにだっこという状態でありましたが,今回では自分から行うべきことを判断し,行動をとることができたようにも感じられました.とりわけCTDを用いた観測については前回の実習では天候や海の状態の関係であまり行うことができなかったので,私としてはその部分を補うことのできる,とてもいい機会となりました.生活面についても,今年度において様々な場所での研究集会や実習に参加させていただいた甲斐もあり,年上の方や教授の方々とのやりとりもある程度臆することなく行えるようになってきたのかな,と感じています.また,今回も例に漏れず,先輩の方々からとても有意義なお話をたくさん頂き,その面でも非常に良い勉強になりました.今回は海洋に関しての研究を行われている方もおられたということで,海洋での観測器具や研究内容など,私にとってあまり馴染みのない分野のお話を頂くことができ,とても面白かったです.

また,前回の実習の際は一日船酔いで動けなくなる事態があったため,その反省を踏まえ,今回の実習では「絶対に船酔いを起こさない」という強い意志をもって参加をしていました.前回の敗因であった夜間の船酔い対策を怠らず,常に酔い止めが効いているかどうかを意識しながら活動を行った結果,船酔いを一度も起こすことなく,しっかりと全ての活動に参加することができました.代償として日中眠気に襲われる場面はしばしばありましたが,そこは気合でカバーしました.

普段とは異なる方々と交流,活動を行うことができ,とてもいい経験をすることができました.また機会があればぜひ参加させていただきたいです.
ここまで読んで頂きありがとうございました.

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新青丸KS-24-10航海@日本海西部対馬暖流域

みなさん、こんにちは!
お久しぶりです。M2の平賀です。
 
6月17日から6月27日まで、KS-24-10新青丸航海へ行ってきました。航海した海域は、日本海西部の対馬暖流域となります。今回はそれについて日記を書いていきます!
 
事前準備
 新青丸航海には、僕と同期の大橋君が乗船しました。まず、6月14日に津から出港場所である函館へ向かいました。そして、翌日訪船し、新青丸に今回の航海で使用する観測機器や荷物などを積み込みました。そして、京大の吉田さんと僕と大橋君との3人で、ラジオゾンデ機器を設置しました。PCの設定や動作確認を行い、問題がないことがわかったので、お昼前に解散になりました。6月17日の出発日まではフリーだったので、ラッキーピエロのハンバーガーや函館塩ラーメンを食べたり、湯の川温泉に行ったり、函館山展望台に行って写真を撮ったりして、航海に向けて英気を養いました。
 
いざ、航海へ
 6月17日の14時ごろ、出港しました。船が動いていることに気が付かないくらいゆっくり岸から離れていきました。函館港を出て、日本海西部の大和堆付近へ向かって出発しました。最初の一日は、向かい風のせいで波が高かったので、船が揺れました。アネロンが効いてるせいで胃が重たいのか船酔いしているのかわかりませんが、1、2日目はとにかく眠くて、ベッドで横になっていました(気持ち悪くはなかったです)。
 
気象観測
 本航海では、気象班と海洋班に分かれて観測を行いました。気象班はゾンデ観測のみを行い、海洋班はCTDや乱流計などを用いて観測を行いました。僕は、気象班に属し、京大の吉田さん・院生一人、大橋君、海洋大の院生二人の6人で観測を行いました。ワッチは、朝型に優しい48ワッチになりました。
 6月18日の23時30分、本航海での一回目のゾンデ放球を行いました。そのあとは、ワッチ通りに動き、3-6時間おきに放球を行いました。19日の5時30分には、僕と海洋大の院生との二人で放球を行いました。学生だけでの放球は初めてでしたので、そわそわ緊張しましたが、無事ゾンデが空高く上がってくれて、データも問題なく取ることができました。ほっと胸をなでおろしました。
 新青丸には、ラジオゾンデ自動放球装置コンテナという素晴らしい機器が搭載されています。僕は、手放球はしたことがありますが、自動放球はまだしたことがありませんでした。写真のようにゾンデをセットし、コンテナの後ろがパカッと開きゾンデが飛んでいきます(ちらっと写っているのはラジオゾンデの本体です)。この自動放球装置のおかげで二人だけのワッチでも難なく放球を行うことができました。しかし、この放球装置は船の左舷側に設置されているため、船の右舷側から風が吹いているときにしか使用できません。特にCTDなどの海洋観測を行っているときはこれに当てはまるため、その時は手放球を行いました。

ここにラジオゾンデをセット!
  

コンテナの後ろがパカッと開く
 
 22日の夕方ごろから低気圧が近づいてきて徐々に風が強くなってきました。23日には低気圧が頭上を通過し、梅雨前線上の低気圧を観測することができました。研究課題は、「日本海西部対馬暖流域における大気・海洋高解像度連続観測による水蒸気輸送過程の実態解明」ですので、ラジオゾンデやマイクロ波放射計を用いて、梅雨前線上の低気圧に流れ込む水蒸気のデータを取れてよかったなと思いました。
 ゾンデ観測は、24日15時30分に終了しました。全部で36発を打ち上げました。また、24日の15時35分から23時まで、乱流フラックス計を作動させながら対馬暖流上を横断して観測を行いました。どんなデータが取れているのか楽しみです!

 
海洋観測
 海洋観測では、以下のような多様な観測が行われていました。
 CTD(計13回)、XCTD(計12回)、Underway CTD(計2回)、乱流計 VMP250(計13回)、現場式濾過装置(1回)、中性浮力型セジメントトラップ(1回)
 僕らは海洋観測を全く行わないため、海洋観測の方たちと交流する機会が少なかったです。初めの方はあまり関わりがなかったのですが、航海後半からは海洋の観測を見学しに行きました。どういう観測機器かを聞いたり、科研費を獲得して自分で観測機器を買えるようになった話を聞いたり、キャリアの話をしたりといろいろな話をして、楽しかったです。

 
船での生活
 船での大きな楽しみは、食事でした。新青丸のご飯は本当に美味しかったです!お刺身、ユッケ、海鮮丼、ラーメン、韓国料理などなど。初日にカニ汁が出てきて衝撃を受け、食事への期待が膨らみましたが、その期待は裏切られることなく最終日まで美味しくご飯を頂くことができました。毎日、7:30、12:00、17:00に出てくるご飯は、船の中での不規則な生活リズムを整えてくれました。
 本航海では学生が8人乗船していたため、学生間での交流も楽しみの一つでした。特に、海洋大の院生二人と京大の院生の方たちとは、深く交流できました。進路の話をしたり、研究の話をしたり、プライベートの話をしたりと非常に楽しかったです。一緒に乗船できてよかったと心から思います。
 最後の方は、海洋観測の学生たちとも交流し、一緒にUNOやババ抜きや神経衰弱をしました。中国人の留学生とも交流し、普段外国の方と交流する機会が少ないのですごく新鮮でした。日本語が得意でない方とは、英語と日本語を混ぜて話しました。自分は英語が得意ではないのですが、意思の疎通ができた時はちょっとした感動を覚えました。英語しゃべれるようになりたい!と思った瞬間でした。
 
船は27日に函館港へ到着しました。11日間という長い航海でしたが、非常に有意義で楽しく乗船することができました。
それでは今日はこの辺で、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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新青丸KS-23-8航海

こんにちは、M2の佐野です。
先日6月18日~27日に新青丸に乗船し、伊豆小笠原海嶺周辺海域まで行ってきました!

観測目的は「伊豆・小笠原海嶺における乱流特性の実態把握および海洋深層・地震検知フロートの実証試験」ということで、海洋観測がメインでした。

今回私は乗船が2回目だったこともあり、船酔いも大丈夫だろうと油断していたのですが、初日はさすがにダウンしてしまいました。
黒潮流域は揺れるということを乗船前の自分に伝えたい...。
「アネロンを飲んでおけ!」と...。
ただ、黒潮流域を越えてしまうと梅雨前線の南側だったこともあり好天に恵まれ、海も始終穏やかでした。

観測項目は、
CTD/LADCP観測・VMP-X観測
乱流フロート
ゾンデ観測・高層気象観測
ハイドロフォン付き深海フロート
私自身初めて観測したものも多かったのでここで少し紹介したいと思います。

ゾンデ観測・高層気象観測
おなじみゾンデ観測。ただ三重大学の勢水丸と違って、自動放球というものがありコンテナで基本的には作業がすべて終わっちゃいます。放球時は写真右のようにコンテナの一部扉を開きます。楽!
 

CTD観測
こちらもおなじみのCTD観測ですが、今回は海嶺周辺海域にて4日間の定点連続観測を行いました。(ヨーヨー観測というらしい)
そして採水も行いました。揚水したCTDから水深別の海水を採水してそれぞれのデータ(今回は塩分)を調べます。海底の水(水深2000mほど)は冷たくて気持ちよかった~!
採水している様子と採水した海水を入れる容器採水している様子と採水した海水を入れる容器 
ここでCTDの小話をすこし。
昔は船で出た生ごみなどはそのまま海に排出されていたらしく、その横でCTD観測がされていたりして信用ならないデータがちょいちょいあったらしい。
どんなんや笑

ハイドロフォン付き深海フロート(MOBYフロート)
海底地震を検知すると自動で浮上してリアルタイムでデータを送信している。
→今回新たに3台投入したフロートは最新型で、CTD観測もできるようになったらしい!
自分が関わった航海のフロートが、今も太平洋を漂いながら健気にデータを送ってくれていると思うと、目頭が熱くなりますね。
写真右に見えるアンテナはCTD観測をするもので、とっても小さい!

現在観測中のものはリアルタイムデータがこちらのサイトで見られるよ。

乱流フロート
定期的に水深2000mまで潜航・浮上を繰り返し、乱流、水温、塩分等を計測できるもの。こちらはMOBYフロートと違って海に放流させた後回収しに行きます。
驚いたのが、フロートの回収!
回収する際は、フロートの緯度経度情報だけから探し出すのです!
↓左写真は乱流フロート、右写真はみんなでデッキに集まって、血眼になってフロートを探している様子。
双眼鏡を覗きながらフロートを探し出している様子
↓左写真中央をよく見るとフロートの旗らしきものが(クリックで拡大してみてね)!見ての通り大海原の中からフロートを見つけ出すのはなかなか至難の業である。右写真はボートを下ろして回収しに行く様子。


VMP-X観測
海表面から海底における微細な流動を観測する。今回は乱流フロートで得られたデータと比較するため、観測はフロート投入点とフロート回収前に、乱流フロート近傍で行いました。

VMP-Xの先端は毛細血管のようにセンサーが張り巡らされているらしく、とても慎重に作業を行いました。こちらの回収は、本体が大きく乱流フロートよりもスムーズに発見されました、ホッ。

今回の観測では3ワッチ制で、私は8-0担当だったのですがこの時間がいつも楽しみでした。というのも乗船した学生メンバーの中には、バイオロギングの研究や海洋、地震の研究をしていたりと多種多様で、自分の分野以外のお話を沢山聞けたり、同ワッチだったJAMSTECの細川さんや伊地知さんから海外での観測体験や裏話などわくわくするような話が沢山聞けたのです。(もちろん観測もしっかりしましたヨ)

この新青丸航海は、空きが出てたまたま参加することができたのですが、やっぱり観測って楽しいな!
今回の航海でお世話になった先生方やJAMSTECの皆さま、携わったすべての方に感謝です。お世話になりました。


おまけ。釣りをさせてもらった話。釣り自体初体験だったのですが、それを太平洋の船上でできるなんて、なんて贅沢な!(釣り上げることはできませんでしたが笑)
船員さんが釣った鯖をしこたまいただき、下船後すぐにヤマト運輸へ持って行き三重へ直送!
一週間分の献立に組み込まれました。おいしかったです。

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2年目の日本海と耕洋丸船員さんの雄姿

こんにちは、m2山中です。

先日2/24に下関に帰ってきた耕洋丸をお迎えに行ってきました。
その道中で、今年1月の日本海観測を振り返って思いにふける時間があり記事を書きました。せっかくなのでこちらにも投稿します。(写真提供:観測メンバの皆さん)

*写真はクリックで拡大できます*

2023年1月19日から31日に行われた「耕洋丸」の航海観測に参加しました。



この観測の目的は、ずばりJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)をはじめとした日本海での大気海洋相互作用の調査です。ラジオゾンデとXCTD(eXpendable Conductivity, Temperature and Depth)によって空と海の鉛直分布を同時に、高時間分解能で測る!というのが本観測の強みです。



◆この航海では、1時間毎の集中観測を3回実行しました。ターゲットはそれぞれ、①1/21に発生したJPCZ(終息期?)②1/24に発生したJPCZ(最強寒波)③1/27に日本海上に発生した胃袋型気圧配置(極前線またぎ)です。
それ以外の期間は、3時間毎または6時間毎の定時観測を行いました。
また、海洋構造を詳細に測るためのXCTD単独観測も実施しました。


◆満を持してやってきた10年に一度クラスの寒波。
2週間ほど前から強い冬型になることが世界中の数値予報モデルで予報されていました。
高まる期待と緊張!しかし観測チーム、耕洋丸の船員さん、そして陸上支援部隊は2年目ということもあり万全の準備とシミュレーションをすることができました。


◆②1/24に発生したJPCZ観測では、あと少し判断が遅ければだれかが波に攫われていてもおかしくないというほど危険な場面もありました。
時が経つにつれ、どんどんとJPCZが本領を発揮してきました。荒れ狂う海!叫ぶ風!波高は6mを超え、すさまじい暴風雪のなか1時間毎の観測を実行しました。



しかし、観測開始から18時間ほど経った頃には、素人や学生が船外に出ることが安全上難しい状況となり、もはや観測続行は不可能かと思われたそのとき!
一等航海士からのひとこと、「我々にやらせていただけませんか。」なんと船員さんだけで放球作業を行うことで、なんとか観測を完遂させようという提案でした。
激しい暴風雪のなか安全帯を装着しながら懸命な観測を行うこと36時間・・・!
やっとのことで獲得したデータを西川さんがさっそく船内で解析してみると、息をのむほど美しいプロファイルが取れていました。

◆この観測を成功させることができたのは、ひとえに耕洋丸の船員・学生の皆様の尽力があったからです。
また陸上支援部隊(川瀬さん・柳瀬さん・渡邉さん・栃本さん・春日さん)からの情報がなくては、あのような良い位置とタイミングでJPCZを待ち受けることはできなかったでしょう。

◆私は1年前にもhotspot2で実施した日本海観測航海に参加させていただき、修士論文でもその中で遭遇した現象に注目しています。
なぜ2回も乗船することになったかというと、日本海の不思議に憑りつかれているからです。
観測してみて改めて、あるいは初めて、違和感を覚えた昨年に続き、さらなる観測データを収集することで日本海の秘密を解き明かしたい。そんな思いで乗船を志願しました。

◆そこで目にした光景は、日本海から湧き出すあたり一面の湯気でした。
四方八方から押し寄せる湯気、まるで海全体が大きな温泉のよう。



これが雪雲の種か・・・!発生条件はまだわかっていませんが、冬の日本海の秘密をまた一つ垣間見た気がしています。

◆もう一つ、興奮したポイントは③胃袋型気圧配置観測です。
当初、本田仮説では下降気流があるはずなので海況は穏やかだろう、と予想していました。
しかし強風は一向に止まず、一体なぜ?という強い違和感と不安に一同は襲われました。
そんなとき、「ちょうどここは極前線付近だ。もしかしたらあたたかいSSTが風速を強めているのかもしれない・・・」と本田さんが思いつき、他のみんなも「そりゃ面白い説だ!やろう!」と息巻いて1時間毎の観測を決行しました。
するとSSTの急低下と同時に、驚くほど明瞭な風速の弱化が捉えられたのです。なんと!観測しながら新たな仮説を立て、それを確かめるという現場に立ち会うという感動体験でした。

◆・・・まだまだ語りたいことはあるのですが、長くなるのでここで留めておきます。
2023年の日本海観測は文字通りの大成功でした。その耕洋丸の船員さんのためにも一つでも多くの研究成果をあげたいと、下船後より一層かみしめています。

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東シナ海梅雨観測:かごしま丸の思い出

こんにちは、M2山中です。
7/3までかごしま丸という船に乗って東シナ海を観測していました。
今回はその航海記をお送りします。
※写真提供:鹿大のみんな(クリックすると大きく見れます)
※航海中のメモをそのまま載せているのでめちゃくちゃ長いです。




観測目的:
東シナ海での海から大気への水蒸気・熱エネルギー供給はいかほど!?
→梅雨前線や線状降水帯の大雨にどのような影響を与えている??


かごしま丸:
鹿児島大学の練習船。約1000トン。


乗船メンバは、
中村啓彦先生(鹿大教授)
仁科文子先生(鹿大助教)
松田和希さん(鹿大M2)
陶山拓さん(鹿大M1)
五島瑠希さん(鹿大B4)
高橋修平さん(鹿大B4)
山本大樹さん(鹿大B3)
井上遼樹さん(鹿大B3)
伊藤穂香さん(鹿大B3)
伊藤花凜さん(鹿大B3)
春日悟さん(三重大研究員)
私(三重大M2)
ほか、海技士プログラムの4年生です。


6/15 [鹿児島入り]
16日から積み込みをすると聞き、前日入り。
学校で仕事をしてから出発しようと思ったら、サーバに異変が!
同期の松田さん(三重大)といっしょに応急処置して、
ばたばたと津を出る。
22時鹿児島到着。


6/16[気象系測器積み込み設置]
ゾンデの受信機セットを積み込み設置。
鹿児島大学の学生さんがとても親切にしてくれて感動。
船に乗らない人もめっちゃ手伝ってくれた。
ほかにも、物品準備など鹿大のみなさんのホスピタリティがすごすぎて、感涙レベルだった。


6/17[海洋系測器積み込み・マスコミ取材]
係留計観測のための荷物積み込みを手伝う。
量が気象系の5~6倍あり、どれも重いものばかり。
クレーンで吊ってともデッキに乗せたものをウンウン言いながら汗だくで船内に運んだ。
午後は鹿児島大学の広報室とテレビ局の取材を受ける。
夕方のニュースで早速報道。うれしくて家族や友人に自慢した。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/20220617/5050019077.html


夜は集中観測前の最終会議。
加藤さん、榎本さん、吉田さんからのGOサインを受け、
決行が決定。ただし全体的に南にずらす。


色々苦労もあったけど、やっと観測できる・・・!
遠足前日の小学生みたいに、わくわくしすぎてよく眠れなかった。


6/18[いよいよ出航!]
14時半と15時半、17時半と18時半にテスト放球&XBT
唯一の不安要素タイマーが成功し、満面の笑み。
翌日の集中観測への意気込みが高まる。


6/19 8:30 - 6/20 11:30[格子点集中観測決行]
予定通り8時半から1時間毎の3船同時観測。
ただし南→北へ向かう。


私は27時間連続でオペレータを担当。
びしょ濡れになって観測するみんなをカメラで見ながら、ブリッジで指示だけ出す。
とはいえ、航海士さんと相談して船の向きを変えてもらったり、
ゾンデのセンサ異常がないか等注意をはらうべきことはいくつかある。


同じ作業の繰り返しとはいえ、流石に集中力との闘い。
途中、
タイマーを開始したかどうか不安になる→結局セットしていた。
だったり、
90分に設定できるところを30分にしてしまった
だったりという凡ミスがあった。


また、1回だけ放球後に着水してしまった回があり、その格子点は欠損となった。
いちばん雨風が強い測点だっただけに、落胆は大きかった。


しかし27時間をやり抜いたときの達成感はすごかった。
これでもう何も怖くない、ボクらはやったんだ!とみんなで歓喜した。
私はただ泥のように眠った。








6/21 - 6/23[黒潮断面観測]
黒潮を横断してゾンデを揚げることで、直上大気はどの程度黒潮に応答し、
それが九州に降る雨にどれほど寄与しているのか?という観測。


奄美大島の西らへんで1.5時間毎にゾンデとXCTDをやる。
1班(私)と2班(春日さん)が6時間交代で観測して、端っこに着いたら休む。


1断面目、21日昼はかなりの大雨で、雷もゴロゴロピシャーン鳴ってたし、
最高にわくわくした!放球隊はびしょぬれになってかわいそうだったけれど笑
あとでデータを見てみたら、ダウンバーストを捉えたような感じで、
改めて良い観測になったなと感慨深い。T君の卒論に期待!


2断面目(昼)と3断面目(夜)はともに快晴だった。
おもしろかったのは、
・3断面目の黒潮側の海面水温は2断面目よりも1℃近く温かったこと。
 2断面目の黒潮側は朝測って、3断面目の黒潮側は翌日の朝方に測った。
 きっと昼の間に熱を蓄えたんだろうけど、1日でもこんなに変化が激しいってこと!
・気温も敏感に応答しているようだし、なんか風速も3段面面のほうが強い。
 風もなにか関連していたら面白いよね。


6/24[係留観測の準備]
ウインチへのロープの巻き付け作業。
間に観測機器を取り付けるので、シャックルやシーブルを付けておく。
アチチな日差しのなかの作業でみんなの体力が奪われる。


6/25 - 6/29[昼:係留計の回収と投入、夜:海底地形探査、切り離し装置の応答テスト、3D-ACMのしっぽ付け、ADCP電池交換、ADCPデータ吸い出しなど]


◆係留計の回収
①前年の野帳を参考に、前年係留計を沈めたポイントへ行く。
②切り離し装置に信号を送るハイドロフォンを10mほど海におろす。
③「切り離せ!」という信号を周囲100mに音波で送る。
④信号を受け取った切り離し装置の火薬が爆発して重り(JRの古レール:800kg)から測器を切り離す。
⑤海面にブイが浮かんでくるので、それを目視で見つける。
 方向探知器も一応あるけど、目視のほうがたいてい速いらしい。
 船員さんも、研究者も実習生も総動員で必死で探す。

⑥見つけたら、ボースンが漁具?みたいなやつで捕まえて、クレーンで吊って船の上に巻き上げる。
⑦ロープから測器などを外して洗う。


◆係留計の投入
①ブイ、ADCP、3D-ACM、サーミスターストリング、切り離し装置を並べる
②それぞれを「設計図」を見ながらロープの適切な位置につなぐ。
 シャックルやシーブルをかませながら、順番を間違えないように連結させる。


③ロープをウインチから少しずつ外していく。

④見送る、また1年後。元気でね!


◆海底地形探査
係留計を沈める良いポイントを見極めるために
海底の深さを見ながらウロチョロする。
急に深さが変わるようなところに沈めちゃうと、のちのち面倒なんだって。


◆切り離し装置の応答テスト
ハイドロフォンから切り離し装置へ向けてコマンドを送ったとき
正常に返事があるかどうかを確認した。
テストした切り離し装置の一つが音がめちゃくちゃ小さくて、使い物にならないということがわかった。
テストだけでも一苦労だったけれど、重要な行程だと思った。


◆3D-ACMのしっぽ付け
1年間海に沈める観測機器を
どうやれば外れないように接続できるのか、という勉強になった。
私は普段金具や工具には一切触らないので、毎度のことながら新鮮な作業だった。


◆ADCPの電池交換
まず新品の電池の検品をする。電圧をミニテスターで測り、14V以上であることを確認した。
次にADCPの蓋を配線をちぎらないように注意して開け、古い電池を取り出した。
ADCPってとても重くって、少し向きを変えるだけで一苦労。
新しい電池をケースにセットして配線し、本体に戻した。
作業中虹が見えて、すごく近くて綺麗だったなぁ。



6/30 - 7/1[CTDとゾンデ散発]
大陸起源の低塩分&栄養豊富な水塊が、
渦の切離を経て黒潮流域に取り残される現象を観測すべく、
CTD観測を2測線で行った。


結果からいうと、低塩分水塊はあった!
1測線目(西)では見えず、2測線目(東)にだけ有った。
低塩分水塊があるってことは、そこはお魚さんの餌場になる可能性や
直上の気象になんらかの影響があるかも知れない。
研究の展開が楽しみな観測だった。


かごしま丸のCTDルームはとても便利なように作られていて、
レールに乗ってて自動で部屋から出たり入ったりしてくれるし、
ドライラボから様子がよく見えるようになっている。
これは4代目かごしま丸をつくるとき、仁科先生がそう頼んだんだって。
ほかにも、お風呂の配置とか、学生の居室とか、
いろんな所に仁科先生のこだわりが組み込まれてるらしい。


採水もやった。仁科先生の授業で使うらしい。


途中ウミガメが流されているのを見た!
船との相対速度ですごいスピードだったから、写真は撮れなかった。


ステンレスマグをCTDの枠につけて400m深まで沈めてもらった。
きれいに六角形に凹んでくれて、実習生の子とおそろいだね♪って喜んでた。

ちなみに凹ますとアイスは結露はするし、ホットはアチチで持てなくなる。


最終日、なんとケルビン・ヘルムホルツ不安定がみれた!!
しかも夕日の上に出来ていて、最高に幻想的で美しい光景だった。
その直前にゾンデも揚げたから、解析してみたら面白いでしょうね。


7/2[台風お迎えゾンデ、おそうじと成果発表会]
台風が近づいているということで、中村先生にお願いして、
8:30にゾンデを放球して通報。(寛大。感謝!)
台風進路予測に貢献できたかな?
そのあとお世話になったかごしま丸のおそうじ。


午後は成果発表会。
春日さんは格子観測、
私は黒潮横断観測、
中村先生は係留観測、
仁科先生はCTD観測について
早速解析結果を実習生や船員さんに向けて発表した。
航海中初めてサイエンスの話ができて、楽しかった。
係留観測の結果が今後も楽しみ。


夜はみんなで大富豪して遊んだ。
ぜんぜん勝てなかったけど、みんなと遊べて楽しかったな。


7/3[積み降ろし、そして別れ]
積み降ろしは大雨。なんでやねん。
ほとんどを海に沈めてきたとはいえ、やはり荷物が大量。引越し業者の気分。
16日間お世話になったみんなに別れを告げる。
みんな気が利いて、おもしろい子たちで、
助けてくれて、仲良くしてくれて、ほんとうに、ありがとう。
たくさんお話できて楽しかったなぁ。忙しさと楽しさが相まって、あっという間だった。


船員の皆様にも、心からの賛辞と感謝を送りたい。
皆様のおかげで、すばらしいデータが採れました。
ありがとうございました。


午後、鹿児島を出航する新青丸に会いに探しに行ったら、
もう船出したあとだった。

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プロフィール

HN:
三重大学 立花研
性別:
非公開
職業:
学生
趣味:
気候について追求する!
自己紹介:
三重大学 生物資源学部
共生環境学科
地球システム学講座
気象・気候ダイナミクス研究室です。

・普段は興味のある気象・気候について研究しています!!

・研究室への質問疑問などなどがありましたら、コメントでも拍手でも構いませんので遠慮なくカキコお願いします!(^0^)ノ

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