三重大学 / 気象・気候ダイナミクス研究室の1コマ → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/earth/index.htm → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/
無事、修士課程を修了しました。M2の中西です。
少し前ですが、2月14-25日にJAMSTECの観測船「白鳳丸」のKH-21-1航海に参加してきました。
東大の岡さんが主席で、北西太平洋で形成される亜熱帯モード水を捉えることが目的の観測です。
この地球日記のために毎日日記を付けていたのですが、思いの外大長編になってしまい、編集しなきゃな〜と思って気付いたら時が流れてしまいました。
結局上手く編集できず、とても長い長い自己満ブログになってしまったので興味のない方は読み飛ばしてください…
なお、ブログ内に挿入するのがすごく面倒だったので、写真をご覧になりたい方は以下の資料をご参照ください。研究室メンバーは研究室アカウントのGoogleフォトも見てみてください。
PCR検査のため津→東京へ移動。東京駅から晴海港まではバスで1本。
埠頭周辺一帯がオリンピック選手村になっており、至る所が立ち入り禁止のため、停泊地点までたどり着くのに若干迷った。
PCR検査は唾液採取方式で、甲板上で各々ソーシャルディスタンスをとりながら唾液を絞り出す様子がなんかシュールだった。
その後陸上で軽く顔合わせ。航海中の海況は基本的に「悪い」と聞かされ、絶望。
朝、乗船者全員PCR検査陰性の連絡があり、一安心。
昼は晴海を散歩したが、街の半分はオリンピック村なので本当に何もない。ピカピカのマンションのような建物が林立しているのに、人がほとんどいない光景はまさにゴーストタウン。これはこれで異世界感があって少し面白い。
朝から乗船者みんなで積み込み作業。勢水丸では考えられないくらいの量の機材や生活用品を搬入した。
白鳳丸は研究室がとにかく広く、多い。あらゆる用途ごとに勢水丸のwet/dryの4倍くらいの研究室がなんと10部屋もある。
今回は主に第3・5・6・7研を使うようで、「あれは○研、これは○研」と声をかけながらバケツリレー方式で搬入した。
事前に発送していた私の生活用品(段ボール×2)も、荷物の山から無事に見つかり一安心。
いよいよ出港!…と思いきや、朝メールを見ると諸事情で明日の朝に延期という連絡が。
3日間自主隔離したホテルは予定通りチェックアウトして、昼から船内で待機となった。
船で暇を潰すとなれば寝る!狭いベッドがとても落ち着く。
勢水丸と違って、既にベッドメイクは施されてあった。あれが地味に面倒だから嬉しい。
船内初の食事はこの日の夕食。メスルーム(食堂)は勢水丸の4倍くらいの広さだろうか。
勢水丸と違って(n回目)、盛り付けが既にされた状態で出てくるので天国。もちろん美味しい。
その後決起集会が行われた。東北大同期の女子2人と仲良くなれた。とても心強い。
今度こそいよいよ出港!松阪港とは違って、東京のビル群や名所(豊洲市場、フジテレビ、東京タワー、羽田空港など)を眺めながらのクルーズはちょっとした観光気分。レインボーブリッジの下もくぐった!
本航海はテレビ朝日による取材が入っていて、空撮ヘリがしばらく着いてきていた。すごい。
出港後は操練(避難訓練)やラッシング(机の下で機材類をロープで縛る)、船内生活説明、観測打ち合わせなどをバタバタと。
そして明日は爆弾低気圧の影響で大しけが予想されるため、いきなり伊勢湾に退避することに。
船用に配布されたメールの設定も行った。ネット環境も一応あるが、1日あたり50MBしか使えず、速度も遅いのであまり使い物にならない。
朝起きたらおなじみの伊勢湾。修論審査が行われているであろう三重大も目視できる。
天候は非常に悪く暴風雨で、伊勢湾にしては大しけの模様だったが、さすがは大きな船。まだまだ心地よいゆったりとした横揺れである。
午前中は洗濯をしたり寝たりして過ごしたが、さすがに暇になり午後からは3研に集まったメンバーでカタン(ボードゲーム)をやった。東北大の学生メンバーともだいぶ打ち解けることができた。
18時にようやく伊勢湾を出発。潮岬まで沿岸を航走し、そこから南下していくというこれまた勢水丸でお馴染みのコース。
いよいよ観測ワッチ開始!私は一番生活リズムが作りやすい8−0で、この日の朝から開始。
未明にものすごく揺れていてあまり眠れず、朝ごはん前後で急に酔った。
しかし8時半のゾンデ放球を手伝うと、テンションが上がりその後は回復。
136°E線に沿って南下しながら緯度15分ごと(約1時間ごと)にXCTDを投下していった。
黒潮の上はやはりとても揺れる。時折机の上のものが全て流れ落ちるくらいの横揺れもあり、座っている椅子ごと転倒しかけた。ピークの場所では流速が5ノットもあった。
昼ごはんには大好きな焼きプリンが出て完食。
夜ワッチ。第一フロート投下予定ポイント(136E, 29N)に到着したが、波高が高くてCTD観測が行えないためしばらく待機。
XCTDの投下係をやった。勢水丸ではいつもウィンチにいたので、何気に初めて。
外に出るととっても暖かい(気温18度)。風もなんだか生温くて亜熱帯の気候って感じがした。
待つこと2時間、CTD観測のGOが出た。今回はフルでボトルを取り付け2000mまで下ろし採水も行う。その数24本。つまり24層分の採水を行い、各層6種類のビンに詰めていく。
ワッチの時間切れでこの作業は次のワッチの班に引き継ぐ。
私たちはデッキ準備を手伝った。採水ボトルのセット、ワイヤを吊る時の支え、表面水温測定など。
揺れが収まり、疲れもあってぐっすり眠れた。気分爽快!
朝ごはんも問題なく食べられ、朝ワッチ開始。
昼ごろに第二フロート投下予定ポイント(136E, 26N)に到着予定。
それまでは昨日と同じく緯度15分ごとにXCTDの投下。
昼ごはん後はワッチ担当時間ではないけど、CTD観測やアルゴフロートの投入を見学。
今日は波も比較的穏やかで、天気も良く観測日和。緯度も沖縄くらいなので日が照ると暑いくらい。日本列島は冬型気圧配置で寒そうだが、まるで気候が違う。
東北大の須賀先生が水中ドローンで観測風景の撮影にトライしていた。
水中でもがくドローンも、そのお世話をしている須賀先生もどっちも可愛い。
今日未明から明日いっぱいは荒天退避。
といっても陸地なんかないので、できるだけ時化を避けるように南西方向に進む。最南下時は北緯23度くらいにいた。
朝ごはんは初の洋食。揺れが酷く、時折食堂に座っている人たちが椅子ごと片側に流れ落ちるくらいだったが、バターロール2個完食。
8:30にゾンデを上げる以外は特にすることがなく、ひたすら寝ていた。
昨日に引き続き荒天退避。
退避してる割に揺れが相当大きく、酔いはしないものの何もできないので暇。
ひたすらベッドで寝ていたが、寝過ぎて逆に疲れた。
24時間ずっとアトラクションの上にいるみたいでそろそろしんどい。
未明から観測再開。天候も海況も良好でとっても気持ちよい。
ことごとくCTD&採水に当たらない我々8-0班。
朝7-8時頃に西之島に接近。思ったより近く大迫力で見えて大感動。
火口の様子や地表の色まではっきり見え、最接近時には硫黄の匂いもした。
なかなか生で見ることはできないだろうし、これを見れただけで今回乗船した価値が十分にある。
ちょうどゾンデ放球時刻が迫っていたので、西之島をバックに…と思ったが、
よりによってこんなときにレシーバーリセットエラー。結局20分遅れで放球した。
夜ワッチ。今日からゾンデの放球が朝8:30に加えて夜20:30にも行うことになったので嬉しい。
XCTDの合間に採水のレクチャーを受けた。今回は全部で6種類×24層分のビンに採る。
酸素や二酸化炭素濃度を測るものは空気に触れないように注意して慎重に採る。
クロロフィルや栄養塩を測るものはビンを3回とも洗いしてから採る。
勢水丸ではこんなに真面目に採水しないのでとても勉強になった。
今日は久々に天気が良かったので、夕焼けや星空も眺めることができた。
夜風に当たり、星空や月を眺め、波の音を聴きながらの観測はとても良い。
昼前に研究室メンバー宛に近況報告メールを送ったが、誰も返信してくれない。悲しい。
早朝激しい縦揺れで目が覚める。このタイプ(アップダウン系)には注意しないとさすがに酔いそう。
31N, 145Eで予定していたCTD観測を中止、後回しにし、西の測点に向かう。
夜ご飯は美味しいハンバーグと大好物のフライドポテトが出たが、さすがに食欲がなく少ししか食べられなかった。
夜ワッチ。今回の放球時は風向きの関係で手すりにゾンデが激突するトラブルがあったが、
センサは無事だったのでよかった。船上での放球台固定は少々リスクがある気はする。
ようやくCTD観測と採水が本格的に我々のワッチに回ってくる。
デッキ準備や表面採水を手伝い、CTDが上がってくるまでは同じワッチの東北大の同期と研究談義や恋話に花を咲かせる。今更ながらモード水について詳しく教えてもらう。
24層分の採水は大変なように思うが、4,5人で協力するので思ったよりは素早くできた。
私は一番深い層を主に担当したので、水温がとても冷たく手が少しかじかんだ。逆に表層付近はとても生温く、水温の鉛直プロファイルを肌で感じることができた。
再び海況が穏やかに。後回しにしていたCTD測点&フロート投入点に向かう。
XCTDは海況が悪い間にも投入済なので、CTD測点に着くまではやることがなく暇。
今回はCTDに取り付ける採水ボトルのセットを手伝ったが、結構力が必要なのでちょっと苦戦。
31°N,145°Eではセシウム採水も行ったので、2回CTDを下ろした。5つ目のフロートも投入した。
このとき東北大の須賀先生の手帳が海に落ちるハプニングもあったが、船員さんたちのテクニックで見事回収。
夜ワッチの仕事はゾンデ放球だけで余裕があったので、同ワッチの留学生にゾンデの仕組みなどをレクチャーした。同期の東北大生が間に通訳に入ってくれて助かった。
その後プチ飲み会をした。全体の観測も大方終わってきたので他のワッチの人も沢山いて気の早い打ち上げのような雰囲気。
主席の岡さんはじめ、研究者はみんな飲んでいても飲んでいなくてもユーモアたっぷりの人が多く、とても楽しい。
早朝に最後のCTD測点&グライダー投入点(29.5N, 141E)に到着。
我々のワッチは採水から引き継ぐ。なんだかんだ採水も何回か経験できたので良かった。
本航海唯一のグライダー投入予定だったが、機器トラブルで中止となる。残念。
10時頃「孀婦岩(そうふがん)」に最接近。西之島に引き続き、名所を見られて嬉しい。
360度何もない海面からそれだけが飛び出ている様子はなんとも不思議で面白い。
双眼鏡でみると岩肌のゴツゴツ感や波が当たっている様子が見れてダイナミックだった。
遠目に鯨を目視することもできた。
昼食後は午前に採水したビンの酸素滴定を行った。
地学系学生には珍しく、ピペットや試薬を使い、化学実験のような作業。
中和点の値をみると表層に比べて深層は極端に酸素が少ないのがわかる。これも面白い。
その後船員さんによる船内ツアーが行われ、ブリッジやエンジンルーム、ウィンチルームを見学した。特にエンジンルームやウィンチルームは勢水丸と比べ物にならないくらい大きかった。
夕食にはステーキが出た。硬い肉を想像していたが、柔らかめでとっても美味しくて感動した。
観測最終日。鹿児島に向かう前に時間の許す限り四国の南で最後にCTD&XCTDをやる。
ゾンデもラスト放球だった。人生ラスト。
ラストなのでセッティングからバルーン準備、放球、野帳記録までなるべく自分でやらせてもらった。4年間の思い出を回顧しながら最後のゾンデを見送った。
CTDもラスト。採水ボトルなしで1000mまで下ろす。混合層がとても深い。
XCTDのオペレーションをやると、場所によって混合層の深さが全然違うことが分かる。
海洋学者たちはプロファイルを見るだけでモード水があるかどうかも分かるみたい。
取りたてホヤホヤのプロファイルを見ながら研究者たちが議論を始めるので、耳を傾けていると様々な知識が得られる。データの見方も少しだけわかった気になる。
この海域では3年分の混合層(モード水)を確認することができた(らしい)。
そうやって生のデータをじっと眺めながら、議論をしたり、アイデアを膨らませたりする贅沢な時間の使い方ができるのも航海の魅力の一つだ、と岡さんは言う。
本航海ラストのXCTDの投下を担当。なんと投下したXCTDは全体で86本。これだけでも観測の壮大さが分かる。
午前までで観測を終了し、午後は片付け、そして夕食後は打ち上げだ!
お腹の調子が悪くて乾杯に間に合わなかったのが残念。
ワッチが違ってあまり話すことができなかった学生ともいっぱいお話ができて良かった。
英語は苦手だけど、留学生ともお友達になれた気がする!
二週間生活を共にしたメンバーの結束感はとても良い雰囲気を作り出していた。
桜島を眺めながら鹿児島入港!
実に12日ぶりに陸に降り立つ。サクサクつながる電波の有り難さよ…
一方で、陸に近くにつれて、航海が終わってしまうことに少し寂しさも感じた。
それだけ楽しく、充実した、素晴らしい航海だったということ。
着岸後も一仕事。荷物の積み出しが待っている。
これが結構大変だった。採水サンプルの重いこと…
お腹ペコペコでみんなカレーライスを食べて、名残惜しくも解散。
鹿児島では仲良くなった同期と念願の「しろくま」を食べた。疲れた体に甘さと冷たさがしみる。
早起き&積み出しで体力が持っていかれてたので、早めに解散。ホテルでゆっくり休んだ。
以上が航海中に書いていた日記の全編です。
覚悟していたよりも全く酔わなかったため、毎日欠かさず書き溜めることができ、相当な文量になってしまいました。
酔わないとなると、本当に楽しい思い出しかありません。
今年度はコロナの影響でなかなか航海に出れず、残念な思いをしていましたが、最後の最後にこんなに素晴らしい経験ができて本当に良かったです。学生生活の中で最も印象的な思い出になりました。
本航海に関わってくださった全ての方々と、送り出してくださった立花先生や研究室のみなさまに感謝申し上げます。
そして、地球日記への投稿もこれが最後です。
振り返ると学会・研究会や観測と貴重な経験をたくさんさせていただきました。
学びと成長の機会を与えてくださった立花先生には本当に感謝しております。ありがとうございました。
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