三重大学 / 気象・気候ダイナミクス研究室の1コマ → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/earth/index.htm → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/
初めまして,学部3年生の山中です.
今回は,6/8~12に行ってきた乗船実習について紹介したいと思います!
(画像はクリックして大きく見ることができます)
いきなり総まとめから言っていいですか!?
今回の実習は,ラジオゾンデ,CTD,XCTD,XBT,バケツ採水等の大気と海洋を観測する術を習得し,大気ー海洋相互のつながりを肌で感じること,さらには日本の気象・気候に大きく影響を与える黒潮の実態を知ることを目的に実施されました.
最初に予定していた航路はこんな感じ.↓
立花研の先輩方が作成した航海図.
和歌山県にある勝浦港から出発してまっすぐ東へ進み,世界有数の熱くて速い巨大海流・黒潮へ突入!そして最後に静岡県沖にある好漁場・金洲まで行き,海の雄大さに触れるというルートでした.
しかしながら結果から言いますと,残念なことにこの計画は完遂されませんでした.大気不安定に伴って波が荒れに荒れ,リスクが高いと判断されたのです.
何が起こるかわからないのが自然であり,観測であると身をもって実感できました.
☆それではまず初めに,それぞれの観測について紹介したいと思います.
ラジオゾンデ(radiosonde;独)は,センサによって気圧・気温・湿度・風向風速等の気象要素を測定し,その観測データを無線で送信することができる気象観測器です.今回使用したラジオゾンデはGPSも搭載しており,GPSの位置情報から気圧・風向風速を算出できます.このラジオゾンデを,ヘリウムガスで膨らませたバルーンにタコ糸で結び放球します.
旅立ったラジオゾンデは上空でバルーンが破裂するまでデータを取得・送信し続け大気の鉛直プロファイルを私たちに教えてくれるのです.
「3・2・1・放球!・・・放した!!」
まるで上京する我が子を見送る親のような気分.感動しました.
CTD観測
CTDとはそれぞれ
・Conductivity:電気伝導度(塩分を測るのに利用)
・Temperature:温度
・Depth:水深
の頭文字を取ったもので,そのほかクロロフィルや溶存酸素も測定することができる海洋観測器です.
「水面!」「見えた!」ウィンチでCTDを降ろしたり揚げたりします.唯々船員さんがカッコイイ.
XCTD・XBT
XCTDとXBTは先述したCTDよりもより手軽に,スピーディに海洋観測ができる代物です.
ただ,測ることのできる項目や深さが変わってきます.
「落ちました!」ロケットランチャーのような見た目からとは裏腹に,ボテッと静かに落ちるところにギャップ萌えです(笑)
その他,バケツ採水等
ここまで紹介した他に,基本観測として水温・水色・透明度・放射温度を測定しました.
透明度板に映える水色を見るのがポイント.
水温の測定.
今回のラジオゾンデ観測では定時観測ということで,02:30,08:30,14:30,20:30の決まった4回に観測しました.何でも全世界でこの時間に観測が行われているそうです.
一方CTD・XCTD・XBT・バケツ採水等ではラジオゾンデの定点観測(決まった場所で観測すること)を行いました.
それぞれの観測ではブリッジ,ウインチルーム,デッキの3チームに分かれて協力しました.
ブリッジにて.CTDを降ろす/揚げるタイミングの指示.
ウィンチルームにて.ラジオゾンデの起動,誤差調べ,GPS受信準備,野帳記入など.
デッキにて.バルーンのガス入れ,野帳記入など.
☆それではここからはいよいよ,5日間の様子を振り返ってみます.
1日目「勝浦を堪能」
1日目はお昼頃に勝浦港に到着してから船内案内・参加者の自己紹介をお聞きした後,
勝浦の風土(食・温泉・人との出逢い)を堪能しました.他大学からいらした学生さんともたくさんコミュニケーションが取れ,充実した1日でした.
船内案内.
中西隊長による実習の概要説明.
2日目「いざ出航,黒潮へ!!のはずが・・・」
いよいよ勝浦港とお別れ.
うーん,いい天気だ!!ハロが見えたとの声あり.
お昼頃にCTDを2000mまで降ろし,14:30に最初のラジオゾンデを揚げました.
「まだ見える,まだ見える・・・あっ見えなくなった」
その後順調にXCTDやXBTの観測を進めていたのですが・・・
だんだん雲行きが怪しくなっていき,勢水丸も波にあおられシーソー状態.予想はしていましたがここまでとは(笑)
なんとか20:30のラジオゾンデを揚げましたが,デッキで放球した人は次のように語っていました.
「バルーンを手で抑えながら,必死に体幹を使って踏ん張っていたそのとき.頭上に荒波が見えたんだ.一瞬デッキが波面よりも低くなって,そのあと大量の海水がデッキに流れ込んできた.あのときは命の危機を感じたね(笑)」
作戦会議.ルートを変更して勝浦沖へ回避することに.
ADCP(海流流速計)によると実は一瞬だけ黒潮に入っていたそうです.
この2日目の夜はずっと岸にいたのですが,低気圧の接近に伴う北東風にあおられて揺れに揺れました.
まかない(台所)のお鍋やら何やらがけたたましい音を立てて落ち,座っている人も強制的に壁にたたきつけられ,それからすぐに反対側の壁にゴツーン!!私の友人はその夜擦り傷をたくさん作っていました.
皆々がベッドの中で船酔いに苦しんでいる最中,なぜか船酔いを全くしない人々だけがはしゃいでいました(笑)
02:30のラジオゾンデ放球に備えて待機していたのですが船員さんに「死ぬ気か!?」と言われてしまい,がっかりして床に就きました.
3日目「お互いの研究または興味のあることについての会」
3日目の夜,せっかく他大学からの学生さんがいらしているからということで,それぞれ研究や興味のあることについてお聞きすることができました.
各人の研究テーマについて,意見質問が活発に飛び交い,笑いもあり,大変盛り上がりました.
レベルの高い気象トークに置いていかれながらも,負けていられない!と今後の研究生活に刺激を受けた夜でした.
夜釣りを楽しむ.アジ・イワシ・サバが大量に釣れた.
その夜,初めての深夜ラジオゾンデ!!
深夜の観測は,親が寝静まってから録画しておいた映画のビデオを見るときのようなわくわくがありました.
闇夜に紛れ行くゾンデとともに私の気持ちも高揚していったのでした~.
4日目「忙しい集中定点観測と最後のラジオゾンデ放球」
英虞湾まで帰ってきた勢水丸.
最後だからということで,CTD・XBT観測をたくさん練習させていただきました.
5つのステーションで観測したのですが,実に20分に1回のペース.
息つく時間も余裕も与えられない時間的にハードな観測で,とてもわくわくしました.
最後のラジオゾンデを放球し,バルーン破裂の知らせを受けデータ受信を停止する操作をした途端,それまで興奮状態だったのが解けたのか,どっと疲れました.足がふらついて眼も霞んだほど.アドレナリンって凄いんだなと実感しました.
その夜,立花研の先輩方が航海中に取った観測結果の考察を話してくださいました.
有意性のある結果が得られなかった部分もあったとのことでしたが,どのような航路を辿ったか,どんな海況であったのか,データの見方など勉強になりました.
生データをその場で分析,グラフ描画する姿がめちゃくちゃ格好よかった.
・・・と,いう様子で今回の乗船実習に参加してきました.
この実習はまさに,勢水丸という素晴らしい実習船を有し,「海の底から空のてっぺんまで」をフィールドとする三重大学生物資源学部だからこそできる経験ですね!
ここで一歌.
来年は 先輩として 黒潮へ. ゾンデマスター 目指して精進 (字余り)
勢水丸の船員さん,5日間をともにし刺激を与えてくださった他大学の皆様,準備してくださった立花研の先輩方・先生方,同期の皆々,親,他すべての皆様へ心より感謝を表して.
終.
COMMENT