こんにちは、M2山中です。
7/3までかごしま丸という船に乗って東シナ海を観測していました。
今回はその航海記をお送りします。
※写真提供:鹿大のみんな(クリックすると大きく見れます)
※航海中のメモをそのまま載せているのでめちゃくちゃ長いです。
*
観測目的:
東シナ海での海から大気への水蒸気・熱エネルギー供給はいかほど!?
→梅雨前線や線状降水帯の大雨にどのような影響を与えている??
かごしま丸:
鹿児島大学の練習船。約1000トン。
乗船メンバは、
中村啓彦先生(鹿大教授)
仁科文子先生(鹿大助教)
松田和希さん(鹿大M2)
陶山拓さん(鹿大M1)
五島瑠希さん(鹿大B4)
高橋修平さん(鹿大B4)
山本大樹さん(鹿大B3)
井上遼樹さん(鹿大B3)
伊藤穂香さん(鹿大B3)
伊藤花凜さん(鹿大B3)
春日悟さん(三重大研究員)
私(三重大M2)
ほか、海技士プログラムの4年生です。
6/15 [鹿児島入り]
16日から積み込みをすると聞き、前日入り。
学校で仕事をしてから出発しようと思ったら、サーバに異変が!
同期の松田さん(三重大)といっしょに応急処置して、
ばたばたと津を出る。
22時鹿児島到着。
6/16[気象系測器積み込み設置]
ゾンデの受信機セットを積み込み設置。
鹿児島大学の学生さんがとても親切にしてくれて感動。
船に乗らない人もめっちゃ手伝ってくれた。
ほかにも、物品準備など鹿大のみなさんのホスピタリティがすごすぎて、感涙レベルだった。
6/17[海洋系測器積み込み・マスコミ取材]
係留計観測のための荷物積み込みを手伝う。
量が気象系の5~6倍あり、どれも重いものばかり。
クレーンで吊ってともデッキに乗せたものをウンウン言いながら汗だくで船内に運んだ。
午後は鹿児島大学の広報室とテレビ局の取材を受ける。
夕方のニュースで早速報道。うれしくて家族や友人に自慢した。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/20220617/5050019077.html
夜は集中観測前の最終会議。
加藤さん、榎本さん、吉田さんからのGOサインを受け、
決行が決定。ただし全体的に南にずらす。
色々苦労もあったけど、やっと観測できる・・・!
遠足前日の小学生みたいに、わくわくしすぎてよく眠れなかった。
6/18[いよいよ出航!]
14時半と15時半、17時半と18時半にテスト放球&XBT
唯一の不安要素タイマーが成功し、満面の笑み。
翌日の集中観測への意気込みが高まる。
6/19 8:30 - 6/20 11:30[格子点集中観測決行]
予定通り8時半から1時間毎の3船同時観測。
ただし南→北へ向かう。
私は27時間連続でオペレータを担当。
びしょ濡れになって観測するみんなをカメラで見ながら、ブリッジで指示だけ出す。
とはいえ、航海士さんと相談して船の向きを変えてもらったり、
ゾンデのセンサ異常がないか等注意をはらうべきことはいくつかある。
同じ作業の繰り返しとはいえ、流石に集中力との闘い。
途中、
タイマーを開始したかどうか不安になる→結局セットしていた。
だったり、
90分に設定できるところを30分にしてしまった
だったりという凡ミスがあった。
また、1回だけ放球後に着水してしまった回があり、その格子点は欠損となった。
いちばん雨風が強い測点だっただけに、落胆は大きかった。
しかし27時間をやり抜いたときの達成感はすごかった。
これでもう何も怖くない、ボクらはやったんだ!とみんなで歓喜した。
私はただ泥のように眠った。
6/21 - 6/23[黒潮断面観測]
黒潮を横断してゾンデを揚げることで、直上大気はどの程度黒潮に応答し、
それが九州に降る雨にどれほど寄与しているのか?という観測。
奄美大島の西らへんで1.5時間毎にゾンデとXCTDをやる。
1班(私)と2班(春日さん)が6時間交代で観測して、端っこに着いたら休む。
1断面目、21日昼はかなりの大雨で、雷もゴロゴロピシャーン鳴ってたし、
最高にわくわくした!放球隊はびしょぬれになってかわいそうだったけれど笑
あとでデータを見てみたら、ダウンバーストを捉えたような感じで、
改めて良い観測になったなと感慨深い。T君の卒論に期待!
2断面目(昼)と3断面目(夜)はともに快晴だった。
おもしろかったのは、
・3断面目の黒潮側の海面水温は2断面目よりも1℃近く温かったこと。
2断面目の黒潮側は朝測って、3断面目の黒潮側は翌日の朝方に測った。
きっと昼の間に熱を蓄えたんだろうけど、1日でもこんなに変化が激しいってこと!
・気温も敏感に応答しているようだし、なんか風速も3段面面のほうが強い。
風もなにか関連していたら面白いよね。
6/24[係留観測の準備]
ウインチへのロープの巻き付け作業。
間に観測機器を取り付けるので、シャックルやシーブルを付けておく。
アチチな日差しのなかの作業でみんなの体力が奪われる。
6/25 - 6/29[昼:係留計の回収と投入、夜:海底地形探査、切り離し装置の応答テスト、3D-ACMのしっぽ付け、ADCP電池交換、ADCPデータ吸い出しなど]
◆係留計の回収
①前年の野帳を参考に、前年係留計を沈めたポイントへ行く。
②切り離し装置に信号を送るハイドロフォンを10mほど海におろす。
③「切り離せ!」という信号を周囲100mに音波で送る。
④信号を受け取った切り離し装置の火薬が爆発して重り(JRの古レール:800kg)から測器を切り離す。
⑤海面にブイが浮かんでくるので、それを目視で見つける。
方向探知器も一応あるけど、目視のほうがたいてい速いらしい。
船員さんも、研究者も実習生も総動員で必死で探す。
⑥見つけたら、ボースンが漁具?みたいなやつで捕まえて、クレーンで吊って船の上に巻き上げる。
⑦ロープから測器などを外して洗う。
◆係留計の投入
①ブイ、ADCP、3D-ACM、サーミスターストリング、切り離し装置を並べる
②それぞれを「設計図」を見ながらロープの適切な位置につなぐ。
シャックルやシーブルをかませながら、順番を間違えないように連結させる。
③ロープをウインチから少しずつ外していく。
④見送る、また1年後。元気でね!
◆海底地形探査
係留計を沈める良いポイントを見極めるために
海底の深さを見ながらウロチョロする。
急に深さが変わるようなところに沈めちゃうと、のちのち面倒なんだって。
◆切り離し装置の応答テスト
ハイドロフォンから切り離し装置へ向けてコマンドを送ったとき
正常に返事があるかどうかを確認した。
テストした切り離し装置の一つが音がめちゃくちゃ小さくて、使い物にならないということがわかった。
テストだけでも一苦労だったけれど、重要な行程だと思った。
◆3D-ACMのしっぽ付け
1年間海に沈める観測機器を
どうやれば外れないように接続できるのか、という勉強になった。
私は普段金具や工具には一切触らないので、毎度のことながら新鮮な作業だった。
◆ADCPの電池交換
まず新品の電池の検品をする。電圧をミニテスターで測り、14V以上であることを確認した。
次にADCPの蓋を配線をちぎらないように注意して開け、古い電池を取り出した。
ADCPってとても重くって、少し向きを変えるだけで一苦労。
新しい電池をケースにセットして配線し、本体に戻した。
作業中虹が見えて、すごく近くて綺麗だったなぁ。
6/30 - 7/1[CTDとゾンデ散発]
大陸起源の低塩分&栄養豊富な水塊が、
渦の切離を経て黒潮流域に取り残される現象を観測すべく、
CTD観測を2測線で行った。
結果からいうと、低塩分水塊はあった!
1測線目(西)では見えず、2測線目(東)にだけ有った。
低塩分水塊があるってことは、そこはお魚さんの餌場になる可能性や
直上の気象になんらかの影響があるかも知れない。
研究の展開が楽しみな観測だった。
かごしま丸のCTDルームはとても便利なように作られていて、
レールに乗ってて自動で部屋から出たり入ったりしてくれるし、
ドライラボから様子がよく見えるようになっている。
これは4代目かごしま丸をつくるとき、仁科先生がそう頼んだんだって。
ほかにも、お風呂の配置とか、学生の居室とか、
いろんな所に仁科先生のこだわりが組み込まれてるらしい。
採水もやった。仁科先生の授業で使うらしい。
途中ウミガメが流されているのを見た!
船との相対速度ですごいスピードだったから、写真は撮れなかった。
ステンレスマグをCTDの枠につけて400m深まで沈めてもらった。
きれいに六角形に凹んでくれて、実習生の子とおそろいだね♪って喜んでた。
ちなみに凹ますとアイスは結露はするし、ホットはアチチで持てなくなる。
最終日、なんとケルビン・ヘルムホルツ不安定がみれた!!
しかも夕日の上に出来ていて、最高に幻想的で美しい光景だった。
その直前にゾンデも揚げたから、解析してみたら面白いでしょうね。
7/2[台風お迎えゾンデ、おそうじと成果発表会]
台風が近づいているということで、中村先生にお願いして、
8:30にゾンデを放球して通報。(寛大。感謝!)
台風進路予測に貢献できたかな?
そのあとお世話になったかごしま丸のおそうじ。
午後は成果発表会。
春日さんは格子観測、
私は黒潮横断観測、
中村先生は係留観測、
仁科先生はCTD観測について
早速解析結果を実習生や船員さんに向けて発表した。
航海中初めてサイエンスの話ができて、楽しかった。
係留観測の結果が今後も楽しみ。
夜はみんなで大富豪して遊んだ。
ぜんぜん勝てなかったけど、みんなと遊べて楽しかったな。
7/3[積み降ろし、そして別れ]
積み降ろしは大雨。なんでやねん。
ほとんどを海に沈めてきたとはいえ、やはり荷物が大量。引越し業者の気分。
16日間お世話になったみんなに別れを告げる。
みんな気が利いて、おもしろい子たちで、
助けてくれて、仲良くしてくれて、ほんとうに、ありがとう。
たくさんお話できて楽しかったなぁ。忙しさと楽しさが相まって、あっという間だった。
船員の皆様にも、心からの賛辞と感謝を送りたい。
皆様のおかげで、すばらしいデータが採れました。
ありがとうございました。
午後、鹿児島を出航する新青丸に会いに探しに行ったら、
もう船出したあとだった。
[7回]
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