三重大学 / 気象・気候ダイナミクス研究室の1コマ → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/earth/index.htm → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/
こんにちは.B4の安藤です.
9月25~29日に九州大で開催された海洋学会秋季大会に参加しました.気象学会は何度か参加したことがありますが,海洋学会は初めてでした.
0日目(9.25)
昼過ぎに飛行機で博多まで行きました.飛行機の下にも上にも異なった種類の雲があり,ずっと見ていても飽きることがありませんでした.
博多到着後,福岡市博物館で開催されていた「日本とクジラ」展を見ました.日本での捕鯨の歴史は古く,縄文時代から行われていたそうで,文化としても深く根付いていることがよく分かりました.
その後,近くにある福岡タワーにも行きました.地上123メートルの展望室からは,夕暮れ時の福岡市街と海が見えました.この日は,展望室付近は風速4メートルの風が吹いていましたが,建物の揺れは0.1センチメートルほどに抑えられていたようです.建物の揺れと逆方向に重心をずらす免震装置が働いているそうで,なんと風速63メートルの風まで耐えられるそうです.
夜は,海鮮丼と屋台でラーメンを食べ,博多の名物を満喫しました.
1日目(9.26)
この日は,沿岸海洋研究会主催の「東アジア縁辺海における大気海洋相互作用と海洋生態系への影響」というシンポジウムに参加しました.1人あたりの講演時間が30分と長く,基礎的なことから説明して下さって理解しやすい発表でした.
・吉川裕さん(九大応力研) 「趣旨説明」
海洋研究について,外洋は衛星観測や世界中の海に水温・塩分などを計測するブイを投入する(約3000個)Argo計画によって,ある程度,研究が進んできました.よって,今後は新しい視点で研究を進めていく必要があります.その1つが大気海洋相互作用であり,これは物理過程だけでなく,生物過程にも当てはまります.
自分は,主に気象学を学んでいるので,気象学から見た大気海洋相互作用の話はよく聞きますが,海洋学から見た大気海洋相互作用の総論的な話は新鮮でした.
・磯辺篤彦さん(愛媛大CMES) 「東アジアの陸棚・沿岸域における大気海洋相互作用の可能性」
日本海は海が大気に影響を与え,また大気が海に影響を与えることが知られています.では,東シナ海はどうなのかというのがこの研究で,結論としては,東シナ海は日本海が日本海上の大気に影響を与えるときの触媒の役割を果たしているとのことでした.解像度の高いデータを解析することで,このメカニズムが分かったそうです.
・立花義裕さん(三重大生物資源) 「東アジア縁辺海で海が駆動する大気擾乱」
最大30分毎といった短い時間間隔で気象観測を行うことで,海が大気に与える影響がよく分かりました.モデルでは,最近細かい解像度で,黒潮などの水温フロント上の大気の状態を再現できますが,現実はどうなっているのかよく分かっていませんでした.多くの観測機器を用いることで,短い時間間隔での観測が可能になりました.
細かい解像度で大気を再現できるモデルも面白いですが,やはり観測が一番楽しいと思います.今年の12月にラジオゾンデを用いた気象観測が予定されているので楽しみです.
・古谷浩志さん(東大AORI) 「東アジア縁辺海への大気物質の沈着とその海洋環境影響」
大気海洋相互作用の研究は物理過程が多いですが,生物・化学過程の研究も重要です.東アジア沿岸域では,春から夏にかけて海が成層化して窒素が枯渇します.そこに,大気から窒素が栄養塩として供給されることで,生物に影響を与えているとのことでした.
・石坂丞二さん(名大Hyarc) 「東シナ海における生物基礎生産への台風の影響」
台風が通過すると海はかき混ぜられて鉛直構造が変化します.具体的には,海面水温が低下し,やや遅れてクロロフィル濃度が上昇するので,基礎生産が上昇することになります.地球温暖化によって海の基礎生産は低下すると言われる一方,温暖化によって台風が強くなると言われています.そうなると,この研究の説では基礎生産が増加することになります.どちらが正しいのか分かりませんが,もっと違うメカニズムが隠されているのかもしれません.
・鬼塚剛さん(水研セ中央水研) 「大気擾乱が日本海低次生態系に与える影響」
物理・生物モデルを使った研究で,海の混合層深度の変化要因は,成層期には風応力,非成層期には熱フラックスだそうです.そして,大気擾乱は基礎生産量の変化に15パーセントほど寄与しているそうです.
夜は,長崎大の万田先生,九大の吉川さんなどと懇親会がありました.研究のヒントを得ることができました.
2日目(9.27)
一般講演は,前日のシンポジウムと比べ,講演時間が短いため,話の流れについて行くのが難しかったのですが,その中でも印象に残ったものを紹介します.
黒潮・親潮セッション
・橋本絋典さん(富山大理工)「黒潮続流上流の長周期変動に対する海洋の非線形性の影響」
黒潮続流は10年ほどの周期で変動しています.どのような変動パターンが多いか調べるEOF解析を行うと,最も多いものに流軸の南北移動があり,2番目に多いものが流れの強さの変動だと分かりました.また,流れが弱いときは,渦ができやすいそうです.このとき,大気にどのように影響があるか興味があります.
ポスターセッション
・Lingqiao Chengさん(東京海洋大海洋科学) 「Quantitative Evaluation of Turblent Mixing in the Central Equatorial Pacific」
赤道付近の海では下層の水が上層に運ばれる湧昇が起こっていますが,太平洋中部では,乱流輸送の影響が大きいそうです.大気ともエネルギー交換するはずなので,大気乱流がどうなっているか気になります.
夜は,東海大,東京海洋大,京大の方ともつ鍋を食べました.
3日目(9.28)
福岡管区気象台では,毎朝8時半に上空の大気を観測するラジオゾンデの放球を行っているので,これを見に行きました.気象台の屋上から大きなバルーンが静かに上がっていきました.自分たちもよくラジオゾンデを使用しますが,船上や都会から離れた場所での放球が多いので,町中での放球風景は貴重でした.
その後,気象台の方のご厚意で内部を見学させてもらえることになりました.各地の気象データなどが大きなディスプレイに表示されており,何か新たな情報があるとそのたびに自動でアナウンスが流れていました.職員の方たちは,パソコンで作業したり,気象データ資料を見たり,打ち合わせをしたりと,慌ただしい雰囲気で,緊張した空気が伝わってきました.
ポスターセッション
・依田和子さん(東海大海洋) 「DPOIとの相関場からみた南大洋上における大気変動特性」
南アメリカと南極大陸の間のドレーク海峡上の偏西風の指標であるDPOIは,6ヶ月,12ヶ月,約3年の周期が見られるそうです.6ヶ月,12ヶ月の周期は,季節変動である可能性が高いですが,約3年の周期の原因が何かまだ分からないそうです.大学院生の方の発表だったので,質問もしやすく,だいぶ理解できました.
お昼は,席が1人ずつ区切られているラーメン店に行きました.
4日目(9.29)
大気海洋相互作用セッション
・川合義美さん(JAMSTEC地球環) 「黒潮続流フロントに対する下層大気の応答」
研究背景の説明で引用されていた論文では,海面水温が高い地域では,熱フラックスも高く,海面気圧は低くなり,低気圧の発達に寄与しているというメカニズムがあるそうです.熱フラックスとの関連だと,温度などの指標に注目しがちですが,気圧に注目するというのは面白いと思いました.自分の研究との関連のある話題だったので,研究を進める上でも様々な論文を読むことの大切さを実感しました.
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