三重大学 / 気象・気候ダイナミクス研究室の1コマ → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/earth/index.htm → https://atm.bio.mie-u.ac.jp/
ども! 3年生の山中です.
この記事では今日11/19(火)に三重県総合文化センターで開催された
「三重県気候講演会」について書きます.
講演会のテーマは,「地球温暖化によって猛暑・豪雨・台風はどうなるのか」でした.
一般向けということがあり,説明も簡単にしていただいており聴きやすく,初学者の私でも楽しめる講演でした.
*** 猛暑 ***
猛暑についてお話してくださったのは,気象研の今田由紀子さんです.
イベント・アトリビューション(EA)という手法について解り易く説明してくださいました.
「異常気象は温暖化のせいですか?」という質問はよくありますが,答えるのは容易ではありません.
そのなかで1つの説得力をもつ手法がEAです.
EAとは簡潔にいうと..
気候モデルを用いて実際の気候を模した大量の実験を行う.
→さらに人間活動による温暖化がない設定で大量の実験を行う.
→温暖化ありorなしで異常気象イベントの発生確率を比較する.
→異常気象への温暖化の寄与を確率的に推定する.
というだそうです.
例として,平成30年7月猛暑のEAを紹介していただきました.
この年,凄まじい猛暑により7月の熱中症死亡者数が過去最多となりました.
気象庁さんの報道発表ではチベット高気圧と太平洋高気圧の重なりがこの猛暑の一因とされていますが,この猛暑は温暖化によるものなのか?という疑問をEAで調べました.
その結果,2つの高気圧配置の形成と温暖化は関係性が薄いということがわかりました.
平成30年7月は世界全体で暖かく,そのような気温の底上げと2つの高気圧配置というイベントの重なりにより猛暑となったとみられます.
私はこのEAのお話を聴いて,異常気象と温暖化の切り分けがこんなにもすっきりと出来るものかと感動しました.すごく納得しやすい手法で,もし研究でEAを使えたら楽しいだろうなと思いました.
今田さんは気象学会2019秋季大会で正野賞を受賞した研究者で,お話を聴いてみたいと思っていた方でした.
*** 豪雨 ***
豪雨についてお話してくださったのは,同じく気象研の川瀬宏明さんです.
川瀬さんのお話はEAを使った豪雨と温暖化の関係の検証についてです.
豪雨検証には確率的アプローチ(頻度)と量的アプローチ(降水量)があります.
結果としては..
【確率的アプローチ】
地域差はあるものの,温暖化によって大雨の頻度は増加する.特に九州西部.
【量的アプローチ】
平成30年7月豪雨は,温暖化によって6~7%降水量が増加した可能性あり.
ということがわかるそうです.
印象深かったのは,質疑の時間でした.
「温暖化に対して私たち(市民)はどのような行動をすべきですか?」という難しい質問がありましたが,
川瀬さんの回答は次のようでした.
「節電や省エネは大切だけれど限界がある.効果的なのは技術革新や国際交渉である.
故に今の子どもたちにこのような(講演会の内容)現状を説き,未来を切り拓いて貰う人材を育てることが大切だと思う.」
私はこの回答に心中で最大級の拍手を送りました.
ぜひA首相には学校教育での地学を必修科目に指定していただきたいものですね!
*** 台風 ***
台風についてお話してくださったのは,名古屋大学の坪木和久さんです.
スーパー台風と呼ばれる勢力の強い台風が度々猛威をふるい,甚大な被害をもたらしますが
その強度の推定には不確実性という問題があります.
1987年に米軍が航空機による台風の観測を終了してから,誰も直接台風の強度を調べた人はいませんでした.
しかし,人工衛星で観測できる雲パターンから台風の強度を推定することは困難を極めます.
そこで坪木先生たちは日本人として初めて,航空機に乗って台風を直接観測することに挑んだのです.
台風の目に突入し,周回しながらいくつものドロップゾンデを投下したとのこと.
また,水蒸気は台風に熱エネルギーを与えるため将来日本近海の海水温が上昇すると,
そこを通ってやってくる台風の強度が強まるというシュミレーションについてもお聴きしました.
講演では観測のときの映像も見せてくださり,非常に面白かったです.
船から揚げるラジオゾンデも良いけれど,飛行機から落とすドロップゾンデも是非体験してみたいです.
おしまい.
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